2001.7.6.


at 保谷こもれびホール

”JAZZ in smoke ―そしてすべては煙にまかれた?―”


 はじめに言っておきます。7月6日、こもれびホールに「いらした」あなた。あなたは本当にラッキーです。こんな素敵なチャンスをしっかりつかんだあなたの運命は、多分これからも揚々としていることでしょう。

 そして!「いなかった」そこのあなたっ。残念ながら今年の運勢は最悪です。よりによって、こんなにいいライブを聞き逃しちゃったんですかあ?これ以上の不運はありませぬ。(-_-メ)

 こもれびホールは旧保谷市、今の西東京市の庁舎に隣接している、最新設備の整った立派なホールだ。会場となった小ホールも、カソリック教会の礼拝堂を思わせる、しゃれた造りになっている。このコンサートの主催は「西東京市文化・スポーツ振興財団」というから、多分自治体の外郭団体だろう。自治体主催のコンサートに吉岡さんを呼ぶなんて、なかなか良いセンスしているじゃないか、西東京市。私が住んでいる北区でも、ぜひこんな企画を立てて欲しいものだ。

 この日は1ドリンク付き。といってもホールの中は飲食・喫煙禁止なのでロビーでワインを楽しんだ後、コンサート観賞ということになる。いつものライブハウスとは違って、今日はお行儀がいいのだ。心なしか、客層もいつもより上品な方々が目立つ。多分地元の方なのだろう、年配のご婦人や家族連れもいる。 開演ブザーが鳴り、客席の照明が落ちた。静まり返る中、吉岡さんが一人で登場。今日はダークスーツにネクタイ・・・うーん、フォーマルだ。そのいささかかしこまった姿に、ちょっと笑えちゃったりする。おもむろに黒光りのするフルグランドピアノに座り、軽くソロを弾き始める。今日は演奏もまたフォーマルだ。すべてが計算され尽くしているように緻密で美しい。ピアノの調べにのせて、真夏の夜が徐々にふけてゆく。・・・・・・

 満場の拍手で1曲目が終わった。そしていよいよ、ドラムのジミー・スミスさん、ベースの塩田ノリヒデさんの登場だ。いつもは曲目だってその日の気分次第なのに、今日は曲目から人の出入りに至るまでみんな細かく台本通りに進められているみたい。なんだか緊張してしまう・・・・・・・。トリオ1曲目は、いつものナンバー「But not for me」だ。やっぱり、ジミーさんのドラムはすごい。音に迫力があり、グリップが利いた両腕から繰り出されるリズムは、じめじめした暑さなんかスカッと吹き飛ばしてくれる。そして、ずっと吉岡さんの表情を伺っている。お前がどう仕掛けて来ようと、受けて立ってみせるぜ。さあ、いつでも来い。・・・そんな感じだ。ジミーさんは吉岡さんにとって、最良のパートナーなんじゃないだろうか。この後も吉岡さんがどんなフレーズで働きかけようと、ジミーさんは即座に呼応している。言葉以上にフィーリングが伝わるのだろう。変幻自在のアドリブがどこまでも盛り上がっていくのだ。

 そして2曲目。出た。吉岡さんのオリジナル、「ワイヤード」。がんじがらめ・・・という意味なのだろうか。アルバムにも収録されている、吉岡さんの魅力ここにあり、といった感じのバリバリのバップだ。アルバムに比べてライブの際にはちょっとテンポを押さえ気味の演奏が多かったが、この日はノリのいいのアップテンポでやってくれた。吉岡さんのバップはさすが、天下一品である。さっきまでの緊張なんてすっかり吹き飛んで、いつものように大きな掛け声をかけながら聞いてしまった。体中にビートが駆け巡っている。 そして、そのあとは一気にクールダウン。「We kiss in the shadow」というロマンチックな曲。さらにジミーさんをフューチャーした「Giant steps」に続く。ジミーさんのドラムソロはまったく飽きがこない。緩急のつけ方が実に面白いのだ。趣味でドラムを叩いている連れの友人が、もう感激しきりだった。ここまで5曲。1部があっという間に終わった。

 20分の休憩のあと第2部。ラテンの曲「ドス・イントロ・パタトス」から始まる。曲の途中で、さすがこもれびホール、なんとスモークが出てきた。白い煙に何色ものライトが反射して、幻想的な雰囲気の中で熱いリズムが続く。こんな演出、初めて。そして、会場中が煙に・・・じゃなく、ビートに巻き込まれていった。

 そしてお次は「So what」。ここでは塩田さんが大活躍だ。ベースソロって、かっこいい!そこに吉岡さんが微妙に絡んでかきまわす。もちろん、ジミーさんもグルだ。全然違う音楽になっちゃったかなーっと思ったところでまたテーマに戻っていく。ベースが本道を行く。ピアノがかき回す。その繰り返しにぞくぞくさせられてしまう。

 この日、吉岡さんは司会も兼ねていたが、ユーモラスなおしゃべりに会場は笑いが絶えなかった。そして演奏は更にユーモラスだ。次のヘンリー・マンシーニメドレーではそのあたりの魅力が遺憾なく発揮された。ヘンリーマンシーニの曲を2曲続けた後、なぜか「エリーゼのために」が・・・・かと思うと「白鳥の湖」が・・・・おなじみのクラッシックがジャジーにユーモラスに演奏されて会場から思わず笑い声が漏れ出す。またこの時の吉岡さんの表情もサービス満点だ。実はこれは「Moment to Moment」へと続くイントロである。さんざんくすぐられた後、この最高にムーディーで切ないテーマが始まると、いつも胸が締め付けられる。ピアノというのは誰でも音が出せるが、その音色は弾く人によって驚くほど違う。そしてもちろん、吉岡さんの音色は最高に美しい。特にこの曲の時にはいつも・・・・・ピアノが泣くのだ・・・・・・。その、泣きたいくらい美しいテーマのあとに続くアドリブは、自由自在に表情を変えていく。あるときはショパンのようなクラシカルでダイナミックなソロが入り、また次の瞬間にはボサノヴァの軽いリズムを刻み、聴く者はなすすべもなく揺さぶられる。会場の雰囲気は今や最高潮だ。

 そしてとうとう最後のナンバー・・・。曲名はわからないが、大団円にふさわしいノリのいい曲だ。ここでもまたスモークのサービス。そしてジミーさんのパフォーマンスが炸裂だ!(ジミーさんってこんなに面白い人だと思わなかった。)ドラムソロに入ると立ち上がり、タムを和太鼓のように打ち鳴らす。かと思うと、おいおい、そこは叩くとこじゃないだろ、というようなドラムの縁の部分でずーっとリズムを取っていたり、挙句の果てにスティックを小脇にはさんで手で叩き始めちゃったりする。ジミーさんは面白い小道具を持っている。スティックに小さいシンバルがついているのだ。スネアを叩きながら小さいシンバルのシャンシャンというかわいい音が同時に聞えるというスグれものだ。吉岡さんもすかさず合いの手を入れる。本当に楽しそうなのだ、これが。やっているほうが楽しいんだから、見ている方が楽しいのは言うまでもない。吉岡さんの軽快なピアノが引き継ぎ、テーマで盛り上がり、拍手と歓声の中、ラストナンバーが終わった。気分は最高!楽しいったらない!

 演奏のあと、若い女性が3人登場、それぞれミュージシャン達にリボンのかかった箱をプレゼントした(大きさから言って、ワインかなー)。そして当然のごとく、会場からはアンコールの嵐が沸き起こった。ちょっと打ち合わせがあった後、「Don't mean a thing」が始まった。もう、体は勝手に踊っている。これだけは打ち合わせに無かったらしく、ライブハウスの時のようなリラックスした演奏を聴かせてくれた。そして最後はお得意、2段落ちでばっちり決まった。時間は20分ほど押してしまったけれど、しばらく拍手が鳴りやまなかった。

吉岡さん、本当にお疲れ様でした!折りしも七夕の前夜。おりひめとひこぼしも恋人との再会に胸を膨らませながら聞き惚れていた事でしょう。私も短冊に願いをこめて・・・「いいライブがもっとたくさん聴けますように!」




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